アザミの生き残り戦略

風に乗る種

花粉を有効に

 

覆い被さる葉

 アザミには、原則として2種類の葉があります。茎から出ているものと、根もとで地面に広がっているものとです。
 根もとのものは、根から生えているから根生葉、あるいは根から出ているから根出葉(略して根葉。茎から出ているものは茎葉)と言います。四方八方に広がるので、ロゼット*葉と呼ばれることもあります。
*  Rosette:ばらの花を上から見た形のことです。プレゼントの品につける花の形をした飾りリボンや教会のステンドグラスで円形のものをロゼットと呼びます。タンポポやアザミの根生葉もロゼットです。

 ロゼット葉と茎葉は、多少なりとも形が異なるのが普通です。花が咲く時期にロゼット葉が残っているものと枯れてしまっているものと、ふた通りあって、種の同定(種名を確定することです)に際して重要な手がかりのひとつになります。このロゼット葉、なかなかのくせ者なのです。

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シマアザミがロゼット葉を伸ばているところ。
 ハマアザミやシマアザミは、海岸の僅かばかりの土を他の植物と奪い合って生きて行かねばなりません。水も乏しく、生存条件は厳しいものがあります。

 ロゼット葉は、最初から横に這うわけではありません。この写真のように、まずは上に向かって伸びるものがほとんどです。そして徐ろに、周りに覆い被さる形で地面に広がります。そこにあった小さな植物は抑え込まれてしまいます。あとから芽を出した植物は、充分な日光を得られず、生存競争に負けてしまうのです。ロゼット葉はそのアザミの縄張りを確保していることになります。  

トゲ・とげ・刺!

 動物に食べられないための工夫として、植物がとり得る一番有効な方策は、毒を持つことです。でも、毒薊というのは聞いたことがありません。アザミは有毒化の手段を開発するのには失敗したようです。
 次に有効なのは、積極的に不味化することです。渋い・苦い・辛い、といった味を持つ植物は、多くの動物から身を守ることができます。しかし、アザミはこの方策も採用しなかったように見えます。試してみた限りでは、取り立てて嫌悪感をひき起こす味には出会ったことがありません。
 少なくとも美味ではないことは疑いありません。もしアザミがおいしかったら、喰い尽くされて、よほど特殊な環境にしか残っていないことでしょう。積極的に探し出して食べようという意欲をかき立てる味があっては、生きては行かれません。味は悪いし、口当たりもよくない。それが多くのアザミの特性であろうと思われます。それでも調理して食べる、悪食の動物が、この地球上には存在するのですが......。

 牛も食べない。

 上の写真はフランスの牧場で撮ったものです。牛の背よりも高く伸びた Carduus 属のアザミが枝を伸ばし、堂々と花をつけています。牧場内に点々と、ときには島状に草叢をつくって、生存権を主張している光景には至るところでお目にかかりました。
 牛が敬遠する一番の理由は「刺(とげ)」でしょう。鋭い刺を持っていますから、食べたら口中血だらけになること請け合いです。刺だけが理由であるのなら、軟らかな若葉の内に食べ尽くされてしまうはずです。それが残っているのは、やはり不味いから避けて食べている内に大きく・硬くなってしまうのだろうと考えられます。踏み倒されないで済んでいるのも、硬い刺があるからにほかなりません。

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